志賀直哉「剃刀」 明治43年6月 [志賀直哉]

さて、記念すべき1作目は志賀直哉の「剃刀」です。
志賀直哉は現代ではすっかり流行らなくなっておりますが、
初期の犯罪小説は結構面白いんじゃないかなあ。
どうかなあ。
では、スタート!

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麻布六本木で床屋を営む芳三郎は、名人との声も名高い。
が、今日はひどい風邪を引いていて寝込んでいる。
ちょうど秋季皇霊祭の前の忙しい時期だが、
人手が足りない。何故なら、以前雇っていた源公と治太公を解雇してしまったからだ。
芳三郎は以前、源公と治太公と同様に店で小僧をしていたが、
その腕が認められて親方の娘と結婚し、店を受け継いだ。
以来、源公と治太公は素行が悪くなり、店の金に手を出すようになったので、
芳三郎は二人を解雇せざるを得なくなったのだ。

祭日前の稼ぎ時でありながら、体は思うように動かない。
しかし、客は芳三郎の腕に期待している。働かないわけにはいかない。
芳三郎の妻のお梅は夫の体を気遣い、夫を休ませようとするが、
そのお梅の気遣いが芳三郎の神経を余計にいらだたせる。
さらに、研磨の依頼をされた剃刀のキレが悪いと顧客からクレームを付けられ、
芳三郎は熱で震える手で剃刀を研ぎ直すが、それもうまくいかない。

そこへ一人の若者が髭を剃りにやってくる。
若者は、これから女郎屋にでも行こうとしているようだ。
芳三郎は若者の髭を当たり始めるが、
きちんと研げていない剃刀ではいつものようには剃れない。
しかし、若者はそれにはお構いなしで、やがて眠ってしまう。
芳三郎は泣きたいような気持ちになるが、
若者はそんな芳三郎の前で大きな口を開けて眠っている。
そのとき、剃刀の刃が引っかかり、若者ののどから血がにじんだ。
それまで客の顔を一度も傷つけた事のなかった芳三郎は、
発作的に剃刀を逆手に持つと、刃が隠れるまで深く若者ののどに突き刺した。
それと同時に、芳三郎の体には極度の疲労が戻ってきた。
立ち尽くす芳三郎の姿を、三方に据えられた鏡だけが見つめていた・・・・。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「剃刀」は、新潮文庫『清兵衛と瓢箪・網走まで』で読むことができます!

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)

  • 作者: 志賀 直哉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1968/09
  • メディア: 文庫



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