国木田独歩「酒中日記」 明治35年11月 [国木田独歩]

はい、今回はちょっと気分を変えて国木田独歩です。
独歩もすっかりマイナーな作家になりました。
でも、中には面白い作品があって、
そのうちの一つがこの「酒中日記」かなあと。

ほんでは、行ってみましょうか〜。

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人口わずか100人あまりの離島・馬島(山口県)に暮らす大河今蔵は、
私塾を開き、島の子どもたちに勉強を教えている。
島民たちから食料を分けてもらい、今蔵を「先生」と慕う島民とともに酒をのんで呑気に暮らしている。
今蔵にはお露という可愛い恋人もいるが、
島民の勧めにも関わらず、お露と所帯を持とうとはしていない。
すっかり馬島に馴染んでいる今蔵であるが、
実は馬島にやってきたのは去年のことで、
5年前までは東京で小学校の校長を務めていた。
なぜ東京を離れ、馬島に行き着いたのか、
酒を呑まなくては思い出すことも辛い
みずからの履歴を、今蔵は日記に書き綴ることにした。

20代後半という若さでありながら校長を務めていた今蔵は、
周囲からの人望も厚く、
当時進行中であった学校改築工事の責任者として日々奔走していた。
家族は妻のお政と一人息子の助。
貧しいながらも地道な生活を送っていたが、
今蔵には悩みの種があった。
母と妹のことである。
お政と折り合いの悪い母親は今蔵とは同居せず、
生計を立てるためという理由から下宿屋を開業した。
時はちょうど日清戦争中。
兵隊が幅を利かせていた時代であり、
女は兵隊と結婚することに憧れていた時代でもあった。
母親の経営する下宿屋に兵隊が下宿してきたことを皮切りに、
母と妹は兵隊相手に「堕落」した生活を送るようになった。

「堕落」した日々を送る母親は金に困るようになり、
ことあるごとに今蔵に無心するようになった。
とは言え、小学校教員の給料などたかが知れたもの。
母親の言う金額をそのまま渡すことは難しい。
ある日、母親が5円寄こせと言ってきたが、
そんな大金あるはずもない。
お政は今蔵に隠れて一張羅の帯を質に入れたが、
それでも3円しか手に入れることができなかった。

5円受け取りに来た母親は、お政が3円しか渡さなかったことに腹を立て声を荒げた。
今蔵はそのとき不在だったため、お政一人で応対することとなったが、
泣き出したお政を前に母親は不満を並べ立てるばかりだった。
今蔵が帰らない限り埒があかないと判断した母親は、
今蔵に手紙を残そうと机の引き出しを開けた。
そこには今蔵が預かっている校舎改築工事の寄付金100円が入っていた。
それに気付いた母親は、100円を盗み、今蔵の家を後にする。

100円盗まれたことに気付いた今蔵は、すぐに母親の家に行くが、
いくら頭を下げて頼んでも、母親はしらばっくれるばかりで金を返そうともしない。
諦めた今蔵は仕方なく母親の家を出て自宅に向かうが、
野原を放心状態で歩く今蔵の足に、何かが当たった。
それは300円の入ったカバンだった。

今蔵は、300円のうち100円は「母親から返して貰った」とお政に見せ、
残りの200円は自宅のタンスに隠した。
カバンの中身には持ち主の名前が書かれており、
いつか返そうと思いながらも、100円などという大金を調達できる当てはなく、
日々は過ぎていった。
金を盗んだ罪悪感から、今蔵は時に生徒にきつく当たるようになる。

そんなある日、お政がタンスに隠してあった200円を見つけてしまう。
お政に気付かれたことを知った今蔵は興奮して家を飛び出すが、
気持ちを落ち着けて帰宅すると、
お政は裏の井戸に助と一緒に身を投げ死んでいた。

家族を失った今蔵は教員をやめることにし、
慰労金として受け取った金から補填し、カバンの持ち主に300円を返済した。
そして、東京を離れた今蔵は自殺を思いながら各地を転々とし、
昨年の春馬島に辿り着いたのである。

以上が今蔵の日記に書かれた過去の履歴であるが、
履歴を語り終えた翌日、今蔵は舟遊びの途中海に落ち、溺死した。
水面を見つめ、「お政お政」と叫びながら海に落ちていったのだという。
今蔵の日記は死後、馬島で小学校の教員が保管していたが、
その教員の友人である「記者」の手に渡ることとなった。
「記者」は、日記の末尾に今蔵の死後お露が子どもを産んだことを付け加え、
さらに、お政とお露のどっちの方が不幸か、どっちの方が悲惨かと問題を提起した。

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あらすじをまとめることは無益な行為なのでは?と思わされる作品でした。
枠組み小説かつ日記体という実に複雑な構造の作品なので、
どうしても作品そのものの味わいをあらすじで表すことはできませーん!
無念ではありますが。

「酒中日記」は新潮文庫『牛肉と馬鈴薯・酒中日記』で読むことができます[るんるん]


牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (新潮文庫 (く-1-2))

牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (新潮文庫 (く-1-2))

  • 作者: 国木田 独歩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/05
  • メディア: 文庫



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コメント 1

ゆっこ

おはようございます☆!!
酒中日記という作品に少し興味があり、あらすじで読ませて頂きましたがとても分かりやすくてよかったです。


また遊びに来ます♪


服部
by ゆっこ (2010-11-22 07:23) 

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