空飛ぶタイヤ【不正は許さん! 仕事にプライドを持った男たちが巨悪と戦うファンタジー】 [好き放題の映画レビュー]

みなさん、こんにちは。

私、『半沢直樹2』にハマっております。
前作は観ていなかったし、観る気もありませんでした。
金融の話って興味ないし、よく分からないし、
そもそも堺雅人があんまり好きじゃないんだよなあってのがその理由。

でも、今回は人から勧められまして、
かわいい男の子に勧められたら何でも受け入れる
をモットーに生きている私は、
第1回の開始を心待ちにしておったわけです。

正直、最初はどう受け止めていいのか分かりませんでした。
まず、歌舞伎役者が多すぎる
出てくるやつ、みんな歌舞伎役者。
私、『七つの会議』という映画の予告編を劇場で観たとき、
笑いが止まらなかったんですよ。



伝統芸能関係者多すぎだろ、演技過剰すぎんだろって。
『七つの会議』も『半沢直樹』と同じ池井戸潤が原作ですが、
いざ『半沢直樹』観てみたら、
歌舞伎役者だらけで、やたらと演技が過剰で、
なにこれ・・・・・・ってドン引いたわけです。

さらには、やたらと古くさい家族像
夫の仕事に関知することなく、ただただ夫を信じ、夫の帰りを待つ妻。
結婚記念日にめったに予約が取れないレストランを予約したのに、
夫の仕事の都合でキャンセルしなければならなくなっても、
笑顔で「大丈夫よ〜」と言う妻。
しかも、上戸彩に「私はもうおばさんだし」と言わせる脚本

え・・・このドラマ、どう受け止めればいいの???
正直、戸惑いました。
でも、初回放映後にTwitterでいろいろ情報が回ってきたのですが、
「『半沢直樹』は昭和時代劇である」という批評を見て、
スッとすべてが腑に落ちたんです。
ああそうか、あのドラマは平成だか令和だかの日本を舞台にしているけれども、
価値観はすべて昭和で構成されているんだ、
そう思ったら、違和感なく観られるようになりました。
上戸彩は、『はぐれ刑事純情派』でいう眞野あずさなんだなと。

今はもう、毎週ゲラゲラ笑いながら観ています。
勧善懲悪主義に貫かれた昭和時代劇。
昔はゴールデンタイムに時代劇やってましたもんねえ。
水戸黄門や暴れん坊将軍観る感覚で観ればいいんですね。


さて、前置きが長くなりましたが、
同じ池井戸潤原作の映画『空飛ぶタイヤ』を観ました。
何か邦画が観たいなあと探していたら、Amazonプライムで配信されていたので。




空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤ

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2019/07/31
  • メディア: Prime Video




『空飛ぶタイヤ』は、実際にあった三菱自動車のタイヤ脱輪事件、リコール隠し事件
元になっています。
作品の中では、ホープ自動車という旧財閥系の会社として登場しています。
脱輪事件で死亡者が出て、
脱輪の原因は運送会社のトラック整備が不十分だったからと結論付けられたことで、
整備会社の社長が会社の威信をかけて真実を暴こうとする、
という物語です。

まあ、言うまでもなく、
最後は巨悪が裁かれ、カタルシスが得られることとなる勧善懲悪ストーリーです。
オチは最初から分かっているわけですが、
ホープ自動車の幹部がクソのクソのクソまみれに描かれることによって、
観ている私たちの鬱憤はどんどんたまっていくことになります。
許せん!!!許せん!!!!
そして、最終的にそいつらに裁きが下されることによって、
やったああああああああああああ!

ざまあああああああああああああああああああああ!!!!

とスカッとすることができる、
まあ、非常に分かりやすい物語です。

ですが、
まあ、分かりやすいってことはすなわち、
現実とな異なるファンタジーを描いているということでもあります。

まず、冒頭で、長瀬智也演じる運送会社の社長が、
「会社を経営するということは、社員とその家族の生活を守ることだ」
って言うんですね。
まずここでため息が出ました。
そんな時代もあったねと、いつかは笑える日が来るわ、と。

もちろん、今でもそう思って会社を経営している社長さんはいるでしょう。
でも、派遣法が改正されたことにより、
人材の使い捨てが容易に行われるようになりました。
私もここ数年は、副業として派遣で働いていました。
もともと長くても3年しか同じ職場で働けないという謎ルールがありますが、
いやいや、そもそも3年になる前に派遣先の都合で契約を打ち切られる方が
恐らく多いのではないでしょうか。

直接雇用であればそんなに簡単に解雇されませんが、
派遣の場合、基本的に3〜4ヶ月ごとの契約更新なので、
必要ないと思ったら簡単に契約の更新を拒否されます。
半年後に自分が同じ仕事をしているかも分からないなんて、
派遣がどれほど不安定な労働環境に置かれているかが分かりますよね。

でも、『空飛ぶタイヤ』の社長は違います。
会社を守ることは社員を守ることだという信念を持ち、
自分が間違っていたことが分かったときには、
自ら社員に頭を下げ、「会社に戻ってくれ」と頼みます。
そんな社長の下で働く社員たちも、
自分の仕事にプライドを持ち、
最後まで社長について行くと誓います。
どんだけいい会社なんだよ、赤松運送!
事務のバイト募集してたら今すぐ応募するよ!

やっぱり仕事にプライドと責任を持つためには、
自分にその仕事を任せられているっていう実感がないとダメですよね。
日本が再び浮上するためには、
まず労働者の雇用環境を改善して、
正規雇用の割合を増やすことが必要なんだなと、
赤松運送というファンタジー職場を観ていて思いました。

一方のホープ自動車も、
自社の不正に気付いた社員が、それではいかんと動き出します。
週刊誌に内部告発をする社員も現れ、
ホープ自動車の隠蔽体質を世間に知らしめるきっかけとなります。
三菱自動車のリコール隠しも、内部告発がきっかけで明るみとなったので、
ここは事実に即していますね。
ただ、沢田部長や内部告発した社員がその後どうなったのか、
この映画の中では明らかにされていません。
日本社会では、正義を貫くことが必ずしも正当には評価されないものですが、
正義を貫いた社員たちのその後をあえて描かないことによって、
この物語は勧善懲悪というファンタジーを成立させているのかもしれません。

とまあ、
実際にあった事件を元にはしていますが、
かなり脚色され、勧善懲悪主義に基づいた痛快エンターテインメント作品になっています。
だからまあ面白いんですけどね。

とにかく出演者が豪華な点も注目です。
『相棒』関係者が多かったのも『相棒』ファンとしては面白かった。
寺脇康文は亀山くんとは異なるイメージの刑事を演じたかったんですかね、
とても不自然なリーゼントヘアの刑事を演じています。
歌舞伎役者はいなかったように記憶しています。いなかったよね??

ちなみに、
『半沢直樹』を勧めてくれたかわいこちゃんに、
「半沢直樹観たよ〜!」って言ったら、
「あ、俺、録画してまだ観てない」とあっさり言われ、
『半沢直樹』についてキャッキャウフフと語るという私のもくろみはあっさり潰えたのでありました。
チーン。

お、アマプラにはドラマ版もあるようです。
観てみようっと!


第1話

第1話

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2015/12/01
  • メディア: Prime Video





空飛ぶタイヤ 上下合本版 (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ 上下合本版 (講談社文庫)

  • 作者: 池井戸潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/07
  • メディア: Kindle版



空飛ぶタイヤ(上) (BE・LOVEコミックス)

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  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/05/11
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空飛ぶタイヤ

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  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2019/07/31
  • メディア: Prime Video



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