野火 [好き放題の映画レビュー]

みなさん、こんにちは!
腐りかけのりんごおばちゃんです!



もう随分前のことになりますが、
8月1日は映画を観まくりました。
だってほら、
ファーストデーで安く観られるじゃないですか〜。
しかも、ちょうど土曜日だったんです!
これは! 行かなければ!
ということで、
4本ハシゴしてきました〜(*´∀`)ウッヒョー



もう8月も終わろうとしていますが、
順番にご紹介致します。
4本全てアタリでしたよ〜!



まずは1本目、塚本晋也監督の『野火』です。



言うまでもなく、
『野火』は大岡昇平の小説です。
私も読んだことはありますが、
もうかなり前、大学生のころです。


なぜ読んだかというと、
『野火』には人肉を喰らうシーンがある
と聞いたからです。
なにそれ〜読んでみたい〜
と手に取った私は、
当然、遠藤周作の『海と毒薬』も
人体実験を描いた小説と聞いて手に取っています。
はい、バカヤロウです。



小説を読んだときは、
正直あまり印象に残りませんでした。
今思えば、
グロシーンを期待しすぎたんでしょうねえ。
田山花袋の『蒲団』も、
ものすごくエロいラストシーンだ
と現代文の先生に言われて読んでみたものの、
なんだたいしてエロくもないわ!
と思ったものです。


なんといいますか、
若いときには
直截なグロ! 直截的エロ!
にばかり目が行ってしまいますね。
想像力と読解力が未熟であったと
言ってもいいでしょう。



今回、本当は原作を読み直してから
映画を観に行きたかったのですが、
時間もなく、
また、いくら探しても『野火』の原作本が
見つからないものですから、
読まずに観に行きました。
あ、見つからないというのは、
本屋に売っていないということではなく、
散らかり放題の私の家がラビリンス化していて、
どこにやったやらハテ・・・・・・ということです。



物語の舞台はフィリピンの戦地です。
日本兵・田村は結核を発症したため、
所属する部隊から野戦病院に行くように命じられます。
が、
野戦病院では
戦場でひどい傷を負った兵士の治療に精一杯で、
結核でやってきた田村は追い返されます。


行き場を失った田村は、
一人戦場をさまようことになります。
食料など皆無に等しく、
あちらこちらに死体が転がっているような状況の中、
田村は次第に追い詰められていきます。


何とかして日本に帰りたい
その思いだけで生き続け、歩き続ける田村。
放浪の途中で知り合った安田永松と共に
行動するようになります。



というように、
敗戦間近となった戦況の中、
極限状態に置かれた人間たちが描かれています。


先ほども書きましたように、
この日は4本映画を観たのです。
どれもいい映画でしたが、
この『野火』が一番印象が強く、
いや、印象が強いなんてもんじゃない、
圧倒的な力を持っている作品でした。



私は戦争が嫌いです。
ゴキブリと戦争、どっちが嫌いかと問われれば、
間違いなく戦争と答えます。
別にゴキブリが平気なのではなく、
とにかく戦争が大嫌いなのです。



なぜこんなに戦争が嫌いなのか
これほどまでに戦争を嫌うのか、
記憶を辿っていくと、
小学校3年生に行き着きます。


私は子どものころから、
本を読むことが好きでした。
今よりも、子どもの時の方が本の虫でした。
小学校3年生に進級した新学期、
新しい教室の窓際には
生徒用のロッカーが並んでいました。


そのロッカーの上に、
簡素な学級文庫コーナーが設けられていました。
置かれているのは数冊の本です。
「うわあ、本だ!」
そう思った私が手に取ったのは、
絵本版『はだしのゲン』でした。
↓多分、これだったと思います。



私はそれまで『はだしのゲン』を読んだことがなく、
それがどういう本かも知りませんでした。
「絵本だ〜ワクワク〜」
そう思ってページを繰っていったら・・・・・・


分かりますよね、
爆風で飛んできたガラスが体中に突き刺さり、
溶けた皮膚が垂れ下がった状態で歩く人たちの
姿が描かれていたんですよ!



ギャアアアアアアアアアアアア!



小学校3年生で、
まだ無垢だった私がどれほど衝撃を受けたのか、
お察しいただけますでしょうか。
その後、
恐いもの見たさで何度か本を手に取りましたが、
【はだしのゲン体験】はトラウマとして
しっかりと残りました。



映画『野火』は、
戦争の野蛮さ、醜さを描いています。
予告編にもありましたが、
腐った肉の匂いが漂ってくるような、
そんな作品です。


BGMなどほとんどなく、
緊迫したシーンが続きます。
人間が戦場において、
どれほど非人間的な行動をとらされるのか、
戦場には美しい要素も悲しい要素もありはしない、
ただそこには、
人間性を失った野蛮さがあるだけだ、
ということが伝わってきます。



毎年8月になると、
テレビでは戦争を扱ったドラマや映画を放送します。
別に悪いことではありません。
でも、
戦争を美談にしたドラマや映画ばっかり
じゃありません?
悲惨な物語を描いているにしても、
その悲惨さを美しく、悲しい物語に
しちゃっていません??



愛する夫が戦地に旅立つ、
一人残された妻が必死に子どもを育てる、
夫の帰りを信じて待っていたものの、
届いたのは戦死の通知・・・・・・。




ええ、確かに気の毒です。
でも、
戦争ってそんなメロドラマみたいなモンじゃないでしょう。
夫は戦地で多くの敵を殺しただろうし、
もしかした民間人を殺したかもしれない。
その戦地の生々しい現実がほとんど描かれず、
戦争ってひどいよね、
戦争ってかわいそうだよね、
戦争って嫌だよね、
って言っても、
何というか、
やっぱり観ている私たちからすると、
遠いよその話でしかないという気がするんです。


結局、
戦争そのものに対してというより、
戦争にまつわる人々の物語
に接しているだけ、
と言ってもいいのかな。
だって、
そういう映画やドラマを観て涙しても、
涙を拭いたら
「さ、お風呂入ろ(´∀`*)」と
何事もなかったように立ち上がる人が
大半なんじゃないでしょうか。



本当にやってはいけないことって、
理屈をこねて、論理的にその理由を説明するのではなく、
もう感覚的に
ダメ! 絶対!
っていう風に否定していいと思うんです。
嫌なモンはイヤッ!
ってことです。



どうして戦争をしてはいけないのか、
理屈で説明しようとしても、
誰もが納得できる説明なんてありませんよ。
戦争をしたい人、しようとしている人たちは、
それぞの理屈、論理に基づいてやってるんですから。
それに反論し、議論を始めても、
議論は永遠に平行線でしょう。



だからこそ、
【戦争をしてはいけないのか】
というテーゼを掲げることなんてやめて、


とにかく何が何でも嫌なモノは嫌なの!!!


と、戦争を捉えることで
反戦意識を定着させることができる、
私はそう思うんです。



というわけで、
映画『野火』は、
毎年『火垂るの墓』に換えて民法で放送すべき
だし、
どんなに子どもが泣き叫んでも、
テレビの前に押さえつけて最後まで見せるべき映画です。


子どものころから、
戦争がどんなに不毛なものか、
どんなに下品で、野蛮で、
人間最大の愚行であるかを
感覚で教えるべきです。
ええ、
どんなに子どもが泣き叫んで嫌がっても
です!
もういっそのこと、
時計じかけのオレンジみたいにして見せてやるがいい!



私が観に行ったときだけかもしれませんが、
観客の大半が中高年でした。
でも、これは、
若者にこそ観てもらいたい映画です。
『永遠の0』とか観てる場合じゃないよ、まったく。



映画の内容に話を戻しましょう。
主役の田村を演じたのは塚本晋也監督自身です。
すごいですよねえ。
役者もやって監督もやる・・・・・多才です。


ですが、
この映画で一番印象に残ったのは、
森優作です。
若い兵士・永松を演じていたのですが、
これまでは舞台などで演劇活動していたようで、
この『野火』がメジャーデビュー作と言っても
いいようです。


出演者みんな顔が汚れて真っ黒なものですから、
永松を演じているのは柄本佑だと最初思っていました。
全然違いましたね。ウケルー。


出演者の中で、
永松が一番難しい役なんじゃないかと思います。
最初は安田の家来のような存在で、
安田に従順に従い、
足の悪い安田をサポートしています。
ちょっと愚鈍なところもある、
そんな青年だったわけですが、
この永松が一番変化を遂げ、
豹変していきます。


永松自身に、
人間性の喪失が表れているわけで、
役者が永松をうまく演じきれなければ、
この映画は失敗していたかもしれません。


森優作、これから楽しみな俳優さんですね。
現代劇だとどんな演技を見せるのかな〜。



安田を演じていたのはリリー・フランキーですが、
相変わらず、ゲスい役が似合いますねえwww
私は、
リリー・フランキーが何だか生理的に受け付けないというか、
何か、どうしてもあくどさを感じてしまって、
CMで深津絵里の夫なんか演じているのに、
違和感を感じてしまうんです。
『凶悪』なんかのリリーさんは、



そう、まさにこれ!
リリー・フランキーってこれだよ!!
という感じでした。


安田役もドンピシャです。
ただまあ、安田も顔が真っ黒で、
最初リリー・フランキーだって気付かなかったんですけどね。



ああああ、長くなりました!
私のブログのいけないところは、
一つ一つの記事が長すぎることやねん!
知ってる、それ知ってる!


次はもう少し短くまとめるぞと、
当てにならない誓いをして終わりたいと思います。


今日も読んでくれてありがとう!
メルシーボークー!




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