芥川龍之介「お富の貞操」大正11年5・9月 [芥川龍之介]

久しぶりの更新です。
忘れていたわけじゃないんだからねっ!

今日は近代文学史一のイケメソ・芥川龍之介の作品です。

「お富の貞操」はあんまり有名な作品ではないようですが、
とても面白い作品です。個人的には大好きです。

芥川は昭和2年に自殺していて、
死ぬ数年前からかなり疲弊していたようで、
その頃の作品を読むととても辛い気持ちにさせられます。
大正11年に書かれた「お富の貞操」は、
まだそれほど芥川が疲れ切っていなかった、
まだ生きる力を持っていたころの作品と言えるかなと思います。
密かに特集しようと思っている【ぬこぬこ小説】の一つでもあります★

では、張り切って行ってみよう!
ニャー![猫]

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
明治元年5月14日、旧幕府軍と新政府軍が衝突した上野戦争の前日のことである。
朝から激しい雨が降り続いているが、
新政府のお達しにより住民は皆立ち退き、上野の街は人気もなく静まっていた。
確認できる人影は、小間物屋の台所に残された一匹の大きなオスの三毛猫くらいだ。

午後四時頃、小間物屋の台所に入ってきた人物がいる。
それは浴衣の懐中に短銃を忍ばせた一人の乞食だった。
乞食は三毛猫の姿を見つけると、
「明日になるとな、この界隈へも雨のように鉄砲の玉が降って来るぞ、
おれも明日死ぬかもしれない。もし死ななかったとしたら、この先お前と一緒
に掃きだめをあさったりはしないつもりだぞ」
と話しかけた。

そこにもう一人の人物が現れる。
今度は小間物屋の使用人・お富だった。
お富は小間物屋のおかみさんが可愛がっている三毛猫を取りに戻ってきたのだった。
新公はこの非常事態に猫のために戻ってくるなんて危険を冒すのは馬鹿らしい、
猫ごときで騒いでいるおかみさんは「わからずやのしみったれ」だと中傷する。
主人思いのお富は、おかみさんを批判されたことに怒り、
「いくさが始まるわけでもあるまいし、何が危ないことがあるか」と腹を立てる。

「危ないことがあるか」と言われた新公は、
「万一わたしが妙な気でも出したらどうするんだ?」とお富を押し倒すが、
お富が剃刀を取り出し抵抗したため、
懐から短銃を取り出し、銃口を三毛猫に向ける。

お富は三毛を撃たないでくれと新公に懇願するが、
新公は「猫を助ける代わりに、お前の体を借りるぜ」と言う。
脅迫されたお富はしばらくのあいだ怒りや憎しみといった
感情を覚えていたが、
覚悟したのか隣の茶の間に入ると自ら帯を解き、畳の上に横になった。
茶の間に新公が入ると、そこには袖で顔を覆って横たわるお富の姿があった。
お富の姿を見た新公は逃げるように台所に引き返し、
「冗談だ。お富さん、もうこっちへ出て来ておくんなさい」と言う。

数分の後、
新公は猫を抱いたお富と向かい合っていた。
新公はどうして猫の命のために貞操を捨てるなんてことをしようとしたのか、
お富に尋ねる。
その質問にお富は「ただあのときはああしないと済まない気がした」とだけ答える。
お富が去った後、新公は柄杓になみなみと水を汲むと
「村上新三郎源の繁光、今日だけは一本やられたな」とひとりごちた・・・・・・・・・

それから20年以上も経った明治23年3月26日、
東京では第3回内国博覧会が開催されようとしていた。
お富は、奉公していた小間物屋の主人の甥と結婚し、
3人の子の母親となっている。
お富が夫と子どもと一緒に上野の街を歩いていると、
内国博覧会の開会式に参加していた政財界の著名人を乗せた馬車や人力車が通っていった。
渋沢栄一や田口卯吉といった人々の乗った馬車や人力車が連なる中に、
多くの勲章を付けた新公を乗せる二頭立ての馬車があった。

すれ違う瞬間、お富と新公は顔を見合わせた。
しかし、お富は変わり果てた新公の姿を見ても驚きはしなかった。
なぜなら新公が「唯の乞食」ではないことは以前から分かっていたからだ。
明治元年のあの日、どうしてあんな無茶をしたのか、
そしてどうして新公は自分に手を出そうとはしなかったのか、
お富にはその理由は分からなかった。
しかし、お富にとってあの日そうしたのは当然の行為であった。
それらはすべて、当然すぎるほど当然だったのだ。
新公の馬車とすれ違うお富は、何か心の伸びるような気がした。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

実は、この「お富の貞操」、物語に面白い仕掛けがしてあります。
お富が帯を解き畳に横になった、その姿が描かれた後、
(四十一字欠)とまるで伏せ字のように肝心な部分が隠されているんです。
これは伏せ字ではなく、作者による意図的な仕掛けなんですが、
この(四十一字欠)をカットしてしまっている本もあるので、
お読みの際はぜひ(四十一字欠)が入っているバージョンを読んでみて下さい。

新潮文庫の『戯作三昧・一塊の土』に収録されているバージョンには、
(四十一字欠)がそのまま載せられているのでオススメですぜ (´∀`)

戯作三昧・一塊の土 (新潮文庫)

戯作三昧・一塊の土 (新潮文庫)

  • 作者: 芥川 龍之介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1983/11
  • メディア: 文庫



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コメント 6

メガネy太郎

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by メガネy太郎 (2010-09-06 21:27) 

メタボッチ


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by メタボッチ (2010-12-14 17:01) 

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こういち


マグロだけですよ?!ベッドで寝てただけなんですよ!?
ただそれだけで、6万いただいちゃったんですけど…ww
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ガトリング白銀


オレの工ッ千が必要とされる時代wぱねェww
女もやっぱ欲しい時ってあるモンなんだな・・・
この前ガンバりすぎて失ネ申させちったから、今回は控えめにいこうww
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by ガトリング白銀 (2011-01-15 01:08) 

あいり

初めまして、急なコメント失礼します。
私大学生でして、現在芥川龍之介の論文を書いているのですが、「お富の貞操」の41字欠の部分がどの書籍にも載っていなくて困っています。
もし今分かるようでしたら、その41字欠の部分だけでもお教え頂きたいのですが、できますでしょうか?
急かすようで申し訳ありませんが、早急のお返事をよろしくお願い致します。
by あいり (2015-07-21 11:09) 

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